
雨の屋久島、森のコワーキングへ|安房から平内・屋久島サウスビレッジまでの一泊二日
今回はちょっと特別編です。
旅行ブログ「japan-travel-log」の取材を、いつもとは少し違うかたちで。屋久島の南、平内にあるコワーキングスペース「屋久島サウスビレッジ」で、この記事を書いています。
世界自然遺産の島で、海と森に囲まれて仕事をする。そこに辿り着くまでの一泊二日の道のりを、写真多めでお届けします。
ノープランの出発点|屋久島空港の観光案内所
屋久島に着いたのは、しとしとと雨の降る午前。さすがは「ひと月に三十五日雨が降る」と言われる島です。
じつは今回は、ほとんどノープラン。決めていたのは「9日にコワーキングスペースで仕事をする」ことだけでした。
そこでまず飛び込んだのが、屋久島空港の観光案内所。「ノープランで来ました」と正直に伝えると、スタッフの方が親身に相談に乗ってくださいました。
手渡されたのは、屋久島交通のバス時刻表と島の地図。「安房のあたりまで行けば泊まれますよ」「バス停はここ」「新札はバスでは両替できないから気をつけて」——ガイドブックには載らないローカルな情報が、つぎつぎと出てきます。
「安房の案内所に行くなら〈警察署前〉で降りるといいよ」。そう教わって、いざ路線バスへ。レンタカーを使わず、バスだけで島を動く取材旅のはじまりです。
警察署前で降りて、傘まで借りて|安房の観光案内所
教わったとおり「警察署前」のバス停で降りると、目の前がちょうど安房の観光案内所。降りた勢いのまま、そのまま中へ。
ここでも、とても親切でした。あいにくの雨でしたが、「これ使って」と傘まで貸してくださり、今夜の宿は近くの「民宿とまり」を紹介してもらえることに。
(この傘には、ちょっとした後日談があります。泊まった民宿とまりのオーナーさんは文房具店も営んでいて、そのお店で傘が買えたのです。なので案内所には、あとから傘を返しに。ついでに、翌日以降の登山に向けたレンタカーやトレッキング用の雨具レンタルのことまで、ここでまとめて相談させてもらいました。)
飛魚の刺身でお出迎え|レストランかもがわ
お昼は、島の方に教わった一軒、安房のレストラン「かもがわ」へ。
壁のメニューには、飛魚のから揚げ定食、焼き魚定食、そして「島の海の幸」と書かれたお刺身定食。屋久島らしい品が並びます。
運ばれてきたのは、飛魚の開きの塩焼きと、つやつやの刺身がそろった定食。
飛魚は身がしまっていて、ほんのり甘い。焼いた開きは香ばしく、ごはんが進みます。小鉢や亀の手まで添えられて、島の海をまるごといただいたような一皿でした。
「世界自然遺産」の碑と安房の路地|雨のまちあるき
お腹を満たして、雨のなかを少し歩きます。
町の一角に、どっしりとした石碑がありました。「世界自然遺産 屋久島」、平成五年十二月登録の文字が刻まれています。
この島が世界に認められた証の前に立つと、これから始まる滞在が少し誇らしく感じられました。
海へと下っていく細い路地を抜ければ、その先には屋久島の海。雨に濡れたコンクリートの溝板が、しっとりと光っていました。
今夜の宿は民宿とまり|安房の町なかに
一日目の宿は、安房の町なかにある「民宿とまり」。
「ようこそ屋久島へ」と書かれた縦看板が、雨のなかで旅人を迎えてくれます。
通された和室は、絨毯に小さなテレビ、ちゃぶ台に押し入れの布団という、昔ながらのつくり。気取らない空気にほっとします。
飾らない島の宿に荷を下ろすと、ようやく「屋久島に来たな」という実感がわいてきました。
夕食はスーパーで島の味を|ショッピングセンターばんちゃん
夕方、傘をさして向かったのは「ショッピングセンターばんちゃん」。安房の暮らしを支える、島のスーパーです。
惣菜コーナーをのぞくと、地のものがずらり。お寿司に煮物、串に刺さった揚げ物、それにかごしま緑茶とゆずジュースまで買い込みました。
宿の部屋に持ち帰って、ささやかな宴。観光地のごちそうもいいけれど、その土地のスーパーをのぞくと、暮らしの手ざわりが見えてきます。これも取材の醍醐味です。
二日目の朝、バスで南へ|安房から平内入口へ
翌朝、雨は上がっていました。
安房のバス停に立ち、赤いポストの脇でバスを待ちます。ヤシの木が並ぶ通りに、潮の匂いをふくんだ風が吹き抜けていきました。
乗り込んだのは、島の南をめざす路線バス。安房から揺られること、しばらく。降り立ったのは「平内入口」のバス停です。
緑にうもれた小さな標識が、ぽつんと一本。背の高い木々と草むらに包まれて、ここが目的地の入り口だとは、よく見ないと分からないほどでした。
森のなかのコワーキング|屋久島サウスビレッジ
バス停から、傘いらずの道を五分ほど。生い茂る緑のなかに、目あての看板が現れました。
手書きの木の看板には「South Village Guest House / Cafe / Shop」。雨に洗われた草の緑に、あたたかい文字が映えます。
その隣には、「食・寛・遊・癒」と大きく掲げた案内板。泊まって、くつろいで、遊んで、癒される——この島の時間の流れが、四文字に詰まっているようでした。
そして、緑のトンネルの奥にある入口へ。送迎用のワゴンが停まり、シダや木々が建物をやさしく包み込んでいます。
箪笥のある部屋で、仕事はじめ
じつは、サウスビレッジのコワーキングスペースはいま改装中とのこと。今回は、仮設の作業場を特別に案内していただきました。
通されたのは、なんとも味わい深い空間でした。
白い壁に、年季の入った和箪笥がふたつ。木のぬくもりが残る床に、長机と籐の椅子が並びます。ホテルのオフィスとはまるで違う、島の家のような落ち着き。仮の場所だなんて、もったいないくらいです。
窓際の机にノートパソコンを広げれば、それだけで仕事のスイッチが入ります。背中にリュック、手もとにコーヒー。静かな雨音をBGMに、キーボードを叩きはじめました。
——そして今、まさにこの机で、この記事を書いています。
世界自然遺産の島で、森に抱かれて記事を執筆する。場所を選ばずに働けるからこそ、こうして取材と仕事を重ねられる。屋久島サウスビレッジは、そんな旅の働き方にぴったりの場所でした。
安房のバス停から、飛魚の定食、民宿の夜を越えて、平内の森のなかへ。たどり着いたこの一日を、ブログに残しておきます。次に屋久島で働いてみたい人の、道しるべになればうれしいです。
