
最終日は、湖畔の宿でむかえる静かな朝から。
もう一度だけ支笏湖を眺めて、そこから札幌、大阪、金沢へ。長い帰り道までが、この旅のひと続きでした。
外がまだ暗い6時すぎ、ふと目が覚めました。
障子のむこうはうっすらと藍色。布団から出るのが惜しいくらいの冷え込みですが、こんな時間に湯へ向かえるのは泊まりならではです。
湖から自然に湧くという露天風呂は、朝いちばんが格別。湯気のむこうに、白く凍えた山がぼんやり見えました。
肩までつかると、しんしんと冷えた空気と、足もとからのぼる湯の熱が、ちょうど半分ずつ体を包みます。
鳥の声ひとつしない湖畔で、聞こえるのは湯がこぼれる音だけ。秘湯と呼ばれる理由が、朝のしずけさでよくわかりました。
湯あがりの朝ごはんは、品数たっぷりの和定食でした。
炊きたてのごはんに、揚げたての春巻き、ふっくらした焼売、ハムとソーセージ、そしてとろろ。
熱いごはんをかき込むと、しんと冷えていた体に芯から火が入ります。旅先の朝は、この一膳がいちばんのごちそうです。
チェックアウトのあと、帰る前にもう一度だけ支笏湖の会場へ立ち寄りました。
「2026 千歳・支笏湖 氷濤まつり」の看板が雪のなかに立ち、昼の光に照らされた湖畔は、夜とはまた違う澄んだ表情。
凍てついた山と灰色の空。最後にもう一度この景色を目に焼きつけて、湖をあとにしました。
新千歳からはANAで大阪へ。そこから北陸鉄道のバス(BLUELINER)に乗り継いで、ひたすら金沢を目指します。
夕方の金沢駅に降り立つころには、外はもう薄暗くなっていました。鼓門の下で、ようやく「帰ってきた」とひと息。
移動の時間は長くても、車窓と乗り継ぎの一つひとつが、旅の余韻をゆっくり冷ましてくれるようでした。
羊肉と雪まつり、氷の祭りと秘湯、そして長い移動。冬の北海道を端から端まで味わった三日間でした。