
店が開く前の、坂の町へ|甘川文化村を歩いて、空港で最後の韓国ごはん
写真で知っていた町は、実際に立つと、想像よりずっと立体的でした。
水色、桃色、クリーム色の家が、斜面に段々と重なっています。少し路地を下るだけで、自分がどこにいるか分からなくなる。甘川文化村は、眺めるだけでなく、迷いながら歩くのも楽しい町でした。
2026年9月6日、釜山一泊二日の二日目。昼の便で帰るので、動けるのは朝のうちだけです。限られた時間にどこへ行くか迷った末、選んだのがこの坂の町でした。
朝八時前の甘川文化村へ
村に着いたのは、朝八時前。入口の人型の看板は、パステルカラーの家々をそのまま体にまとっていました。手のひらにも小さな家がのり、胸には「Welcome」の文字。

足もとの植木鉢にはピンクの小花。坂の下から、ひんやりした風が上がってきます。まだ店も開いていない、静かな時間でした。
展望のきく場所へ立つと、四角い家が段々に並んでいます。屋根は青、壁は桃色、その隣は黄色。一軒ごとに色が違うのに、全体では不思議とまとまって見えました。
家のすき間には、白いマンションが一棟。背後の緑の山と、稜線の上に湧いた朝の雲も見えます。平面の写真で見ていた景色に、奥行きがありました。
朝八時台の村を歩く人は、数えるほどです。屋上には洗濯物が揺れ、坂を上る住民の手には買い物袋。観光地として賑わう前の、ふだんの暮らしの時間に立ち会えた気がしました。
急な階段と細い路地が、縦横に延びています。少し下ると、もう自分のいる場所が分からない。その迷いも含めて、村を歩く時間を楽しみました。
空港の食堂で、帰る前の一膳
村を下り、そのまま金海国際空港へ向かいます。搭乗までの時間に、最後の韓国ごはんをいただきました。

白いごはんに、韓国海苔をたっぷりのせたもやしのナムル。豚肉のコチュジャン炒めとスープもあります。小鉢には、キムチ、大根のキムチ、黒豆の煮物まで並んでいました。
もやしはしゃきしゃき。海苔を指で崩すと、ごま油の香りがふわっと立ちます。豚肉は甘辛く、ごはんが止まりません。空港の食堂で、この充実した一膳をいただけることに感心しました。
食べ終えると搭乗口へ。窓の外には、昨日、空から見下ろした海が広がっています。
次は、もう少しゆっくり歩きたい
一泊二日、実質は一日半。短い滞在でも、海雲台の砂浜から看板の多い西面へ、そして今朝の坂の町まで歩けました。
帰る前に残っているのは、まだ店の開かない村の路地を歩いた時間です。屋上の洗濯物や、買い物袋を提げて坂を上る人。観光地の景色の中に、普通の朝がありました。
関西から飛行機でおよそ一時間半の先に、こうして別の暮らしがある。次は市場ものぞき、温泉にも浸かって、もう少しゆっくり歩いてみたいと思います。



