
海を越えて、その日のうちに海雲台|西面のユッケと締めのミルミョン
大阪から飛行機で1時間半。9月のはじめ、海の向こうの釜山へ1泊2日で行ってきました。
午前に関西空港を出て、その日のうちに海雲台の砂浜に立つ。そんな距離感の旅です。
窓の下はもう韓国の海|関西空港からジンエアーで金海へ
午前10時半すぎ、関西空港を離陸。機内でうとうとしていたら、もう窓の下は入り組んだ入り江でした。
細長い砂浜、その背後にびっしり建つ高層マンション、遠くに霞む山並み。翼の先で光る黄緑色は、乗ってきたジンエアーの目印です。国際線に乗っている実感が湧かないくらい、あっという間の空の旅でした。
金海国際空港に降りて入国審査を抜けると、到着ロビーで白いカモメが待っていました。
メガネをかけて風船を持ったマスコットと、光る「Busan is good(부산이라 좋다)」の文字。ここで1枚撮ると、ようやく「来たな」という気分になります。
空港の外に出れば、頭の上を軽電鉄の高架が走り、白いタクシーがずらりと列をつくっていました。この日は車で市内へ向かいます。
着いた足で、ユッケにウニをのせて|西面の焼肉
最初に向かったのは繁華街・西面(ソミョン)の焼肉店。時計は午後3時を回っていて、ずいぶん遅い昼ごはんです。
席に着くと、テーブルがみるみる埋まっていきます。真ん中に炭火の鉄板、その横に固形燃料の小鍋、ぐつぐつ煮えるチゲ、韓国海苔、青唐辛子、そして氷がぎっしり詰まったグラス。
主役はこれでした。ごま油と胡椒をまとった生肉のまわりに、オレンジ色のウニがぐるりと並んでいます。真ん中には卵黄とわさび。
混ぜて口へ運ぶと、肉の甘みに海の塩気が重なって、初日からいきなり釜山の贅沢に殴られたような気分になりました。
石鍋のチゲは運ばれてきた時点でまだ煮えていて、白い湯気がまっすぐ立ちのぼります。ズッキーニと豆腐がごろごろ入った赤いスープは、辛さより先にだしの甘みがきました。
鉄板では、ネギを巻き込んだ肉とエリンギ、それに大ぶりの青菜が音を立てて焼かれていきます。しんなりした葉で肉を包んでひと口。ここまで来て正解だった、と早々に確信しました。
看板の森を抜けて|西面の街歩き
お腹が落ち着いたら、そのまま西面の通りへ。ハングルの看板が両側の壁を埋め尽くし、その突き当たりに緑の濃い山が見えます。
賑わい方は日本の繁華街とよく似ているのに、文字と色だけが全部違う。歩いているだけで、写真を撮る手が止まりません。
いったんホテルにチェックイン。大理石の床にグレーの壁、丸いテーブルがひとつ。荷物を置いて身軽になったら、すぐ次の目的地へ向かいます。
白い砂浜と摩天楼|夕方の海雲台
夕方、釜山でいちばん有名な海へ。海雲台(ヘウンデ)です。
砂浜に降りると視界が一気に開けました。右手に高層ビルの壁、正面に水平線、左手には緑の丘。砂は驚くほど細かくて、歩くとサンダルの中にさらさら入り込んできます。
浜には赤い「HAEUNDAE」のサイン。9月に入っても泳いでいる人がいて、遠くではジェットスキーが白い筋を引いていました。
波打ち際まで歩くと、沖に赤い人形のようなブイが浮かんでいます。打ち寄せる波は思ったより荒く、油断すると足首まで濡れる。傾いた日射しで、砂が金色に光っていました。
振り返れば、海のすぐ横に突き刺さるような超高層ビル。海雲台エルシティです。ガラスの壁が夕日を反射して、ビルとビルの隙間から光が漏れていました。
坂の途中のパン屋でひと息|MUMU TERRACE CAFE
浜から月見坂(タルマジキル)の方へ上がっていくと、レンガと土壁でできた不思議な建物が現れました。「MUMU TERRACE CAFE」。
ゆるくカーブした階段の一段ごとに明かりが仕込まれていて、夕暮れどきにちょうどよく灯っています。
中に入ると、曲線だらけの店内にパンがずらり。焦げ目のついたデニッシュ、ころんと丸いクリームパン、チョコレートの菓子。天井から下がる裸電球と枯れ枝のオブジェで、洞窟の中のような雰囲気です。
選んだのは、明太子のようなソースがかかったパン、抹茶色の縞模様のデニッシュ、そしてクリームをのせたタルト。アイスコーヒーのカップには、この店のキャラクターらしい灰色の生きものが描かれていました。
歩き通しの足に、冷たいコーヒーと甘いパンがじんわりしみます。
釜山の夜は冷たい麺で締める|海雲台 가야밀면
日が落ちてから向かったのは「해운대 가야밀면(ヘウンデ・カヤミルミョン)」。ひさしに「釜山郷土飲食1番街」と書かれた、地元の麺屋さんです。
壁には白い犬とおじさんのイラスト、入口には「어서오십시오(いらっしゃいませ)」の赤い看板。観光地の店というより、町の食堂の顔をしています。
ミルミョンは釜山生まれの冷たい麺。細い小麦の麺に冷たいスープをはり、ゆで卵と細切りの肉、大根、赤いヤンニョムをのせていただきます。
すすると、甘酸っぱさと辛さが一度に来て、そのあとにすうっと冷たさが残る。真夏を引きずった9月の体に、これ以上ないほど効きました。一緒に頼んだ蒸し餃子は、皮がもっちり厚め。焼肉で始まった一日を、麺と餃子で締めます。
光の橋を見に行く|広安里の夜
最後は広安里(クァンアリ)へ。海辺のデッキから眺めると、対岸に広安大橋がすっと横たわり、主塔のライトが水面に長く伸びていました。
足元のタイルは赤い照明に染まり、寄せる波だけが白く光る。今日の昼にあの空を飛んできたことが、もう遠い出来事のように思えます。
着いたその日にここまで回れてしまうのが、釜山の近さでした。2日目は朝いちばん、坂の町へ向かいます。




