
高速船トッピーで屋久島をあとに|鹿児島から新幹線、京都の夜は鮨炉まんで
四泊した屋久島も、いよいよ最終日。
そして、四日間ずっと雨や曇りだった空が、最後の最後で気持ちよく晴れてくれました。
もともとノープランで来た旅。行きはプロペラ機で空から島に入ったので、帰りはあえて別ルート——海を渡る高速船で島をあとにすることにしました。高速船に乗るのは、じつは初めての体験です。
晴れわたった最終日、安房をあとに
最終日の朝、雨はすっかり上がり、安房の町に夏のような青空が広がっていました。
四日間お世話になった宿をたたみ、荷物を背負って歩きます。ずっと雨に煙っていた町が、陽射しのもとではまた違う、晴れやかな表情を見せてくれました。
町の入口には「安房(Anbō)」と刻まれた石碑。屋久島の形をかたどったマークが添えられています。路線バスやレンタカーの拠点として三日間お世話になった安房に、心のなかでお礼を言いました。
ここから、島の玄関口・宮之浦へ移動します。
はじめての高速船へ|宮之浦港・トッピー
やってきた宮之浦港。堤防の向こうに、雲をいただいた屋久島の山なみが見えます。雨の多い島も、最終日はくっきりと稜線を見せてくれました。
港のターミナルで乗船手続き。屋久島10時40分発、鹿児島港ゆきの高速船「トッピー」に乗り込みます。飛行機の搭乗券によく似た一枚を手にすると、これから海を渡るのだという実感がわいてきました。
ジェットフォイルで海を渡る|屋久島→鹿児島
乗り込んだのは、種子屋久高速船「トッピー」。運賃は14,000円です。
ジェットフォイルは海面を滑るように加速し、宮之浦の港がみるみる遠ざかっていきます。船体が水中翼で浮き上がると、揺れはおどろくほど少なく、快適な乗り心地でした。
窓の外には、四日間を過ごした屋久島の島影。深い緑の山が、少しずつ青くかすんでいきます。森を歩き、海の湯につかった日々を思い返しながら、名残を惜しみました。
やがて進む先に、鹿児島本土の陸地が見えてきました。来るときはプロペラ機で空から、帰りは船で海から。同じ道のりを別の高さからたどるのも、ノープランの旅ならではの楽しみです。
約2時間の航海で、お昼すぎに鹿児島港へ到着。降り立って振り返ると、ピンクと白の船体の「トッピー7」が誇らしげに停まっていました。はじめての高速船は、移動そのものが立派な観光になる体験でした。
市電に飛び乗って、鹿児島中央駅へ
鹿児島港に上陸すると、空気が一変。ビルが立ち並び、四日ぶりの「都会」の景色です。
港からは、一路、鹿児島中央駅をめざします。通りに出ると、ちょうど黄色と緑の市電がやってきました。これ幸いと飛び乗ります。
コトコトと揺られて、鹿児島中央駅へ。
駅前に着くと、大きな駅ビルがそびえています。島の素朴な町並みから一転、人と車が行き交う都会のスケールに、旅の終わりが近いことを実感しました。
駅弁を買って、新幹線で京都へ|九州新幹線
鹿児島から金沢までは、新幹線を乗り継いでもかなりの長旅。せっかくなので無理に急がず、余裕を持って、途中の京都で一泊していくことにしました。ノープランの旅は、最後まで気の向くままです。
鹿児島中央駅では、車内のお供に駅弁を調達しました(1,665円)。「鹿児島弁当」と銘打たれた幕の内に、濃いお茶を添えて。
島の魚づくしから一転、こんどは駅弁を片手に。新幹線に乗り込み、まずは京都をめざします(乗車券類18,060円)。屋久島の原生林から九州新幹線の車窓へ、景色がめまぐるしく移りかわっていきました。
京都の夜は、路地の鮨炉まんで|四条烏丸
京都に着いたのは夜。四条烏丸から一本入った路地は、大通りの喧騒が嘘のように静かでした。
足を止めたのは、白い暖簾と「鮨炉まん」の提灯。中をのぞくと、炭の匂いがふわりと流れてきます。
入口の品書きは、左に刺身、真ん中に巻物と握り、右に炉端の焼きもの。鮨と炭火の二枚看板です。刺身¥450〜、巻物¥290〜、炉端¥490〜と、気負わない価格。刺身で一杯やりながら、炭火を一品ずつ攻める作戦に決めました。
席に着くと、海がいっぺんにやってきました。
白えびは、醤油をくぐらせると身がほろりとほどけて、口の中でとろりと甘い。胡麻と薬味が、その甘さをきりっと締めます。焼いた海老は殻ごと炭にかけたのか香ばしく、ホイル焼きを開ければ、湯気とともに磯の香りが立ちのぼりました。レモンをきゅっと搾れば、炭の香ばしさに酸味が重なります。
刺身の冷たさと炉端の熱を、一卓で行き来できる贅沢。屋久島の森と海をめぐった長い一日の締めくくりに、京都の路地で炭火と握りを味わいました。移動日の夜とは思えない、満ち足りた食卓です(10,835円)。ごちそうさまでした。
翌朝、京都から金沢へ|旅のおわり
翌朝は京都から金沢へ(5,850円)。
見慣れた金沢駅の鼓門に出迎えられて、ようやく我が家に帰ってきたのだと実感します。プロペラ機・路線バス・レンタカー・高速船・新幹線と、あらゆる乗り物でつないだ屋久島取材の旅。森と海と島の暮らし、そして帰り道に味わった京都の一皿まで、まるごと記録できた四泊五日でした。


